売買契約時の手付金と手付解除について徹底解説!

家を売ったり買ったりするときに売買契約が締結されますが、この売買契約書内に手付金支払いの記載があれば、契約締結後に手付金の授受が行われます。

この手付金は買主から売主に対して支払われるもので、受取った売主はその証として領収証を買主に渡します。

今回は売買契約時に支払われる手付金と手付解除について解説していきたいと思います。




手付金とは

手付金とは、売買契約時に買主が売主に対して予め決めておいた金額を支払う前払い金のようなもので、売買代金に充当される金銭になります。

手付金は支払いが強制されているものではないのですが、不動産売では通常支払われるのが一般的で、契約書内の契約条項にも盛り込まれています。

手付金には、

  1. 解約手付
  2. 証約手付
  3. 違約手付

と3種類あり、売主が個人の場合は民法557条により原則解約手付となります。

売主が不動産業者の場合も鉄拳業法39条が適用されますので、解約手付としてみなされます。

①解約手付とは

解約手付とは、売買契約を締結した場合でも、理由に関係なく後で解約する事ができる手付を解約手付と言います。

相手方が契約の履行に着手するまでは、手付金を支払った買主は手付金を放棄し解約をする事ができます。

一方売主が契約の解除を行う際は、受取った手付金を全額返還し、さらにそれと同額の金銭を支払うことで契約を解除する事ができます。

つまり、買主が解約する場合は「手付金の放棄」となり、売主が解約する場合は「2倍の金銭を返却(手付倍返し)」すれば契約を解除する事ができると言うことです。

②証約手付とは

証約手付とは、売買契約が成立したことを証する為に交付される手付になります。

売買契約が締結されるまでに、いろいろな交渉があり、長引いてしまうとどの時点で売買契約が成立したのか明確でない場合が考えられるので、そのような場合は契約の成立を証明するために証約手付を交付します。

ただし、日本では手付と言えば原則「解約手付」となります。

③違約手付

違約手付とは、債務不履行が発生した場合に「手付が没収される(または手付の倍額を償還する)」手付のことを言います。

不動産売買契約における違約手付は、買主が違約手付10万円を交付した場合、買主に「債務不履行(代金支払い義務の不履行)」が発生すれば、その違約手付10万円が没収されます。

逆に売主に「債務不履行(引き渡し義務の不履行)」が発生した場合は、受取った違約手付10万円を全額返還し、さらにそれと同額の金銭を支払うことになります。

つまり、解約手付と同じように2倍の金銭の支払い義務があると言うことです。

このような違約手付は「損害賠償額の予定」と解されています。

ただし、日本では手付と言えば原則「解約手付」となりますが、解約手付であっても違約手付であってもどちらも問題はありません。

 手付の種類は上記のように3種類ありますが、原則日本では「解約手付」が一般的とされていますので、解約手付の内容をしっかりと理解しておきましょう。
 履行の着手とは
履行の着手とは、買主が代金の一部として内金を支払ったり、売主が物件の引き渡しや登記の準備を始めた場合等のことを言います。要するに、その契約ごとに対して何かしらの動きが発生した時点で契約の履行に着手したと言うことになります。

不動産売買における手付金の相場や受け取る時期

手付金は、売主が不動産業者である場合は「売買代金の2割以内」と宅建業法で定められていますが、売主が個人の場合は特に制限はありません。

一般的な手付金の相場と言えば「売買代金の10~20%」で、売買代金の20%と定める場合がおおくなっています。

しかし、売買代金が高額であればあるほど手付金の額が高くなりますので、「手付金ん100万円」とする場合も多くなっています。

手付金の支払いは義務があるものではないのですが、買主が簡単に契約を止めないための縛りでもあります。

逆に、買主からすると手付金を支払うことで、売主が簡単に売るのを止めないようにさせるためのものでもあるのです。

ですから、手付金は安すぎるとあまり意味がなく、10万円程度でしたら平気で手付放棄をして解約をする人も居ますので、なるべくなら100万円以上は受け取っておいた方がいいでしょう。

いずれにしても、手付金の額は仲介業者を通して売主と買主で話し合って決めるようにしましょう。

手付金を受取る時期はいつ?

手付金の受取時期につきましては、基本的に売買契約を締結する日になります。

支払い方法は基本的に現金で行われますが、金額が大きい場合は予め銀行員の派遣を依頼しておくようにしましょう。

手付解除について

売買契約を締結すると、売主と買主双方がその契約内容に拘束されます。

そのため、もし契約内容通りに履行できなければ債務不履行となりどちらかが「損害賠償(違約金)」の対象となります。

しかし、例外があってその期日内であれば違約金の対象となることなく、手付金の放棄で契約の解除を行うことが可能となります。

これを「手付解除」と言います。

手付解除とは、不動産売買契約を締結する際に買主が売主に対して手付金を支払いますが、あらかじめ決めておいた期日までなら「手付金を放棄して契約の解除」をする事ができると言うものになります。

例えば、売買契約時に100万円の手付金を支払っていた場合で、契約締結後に理由にいかんなく契約の解除をしたくなった場合は、手付解除期日内に限りその支払い済みの100万円の返還を放棄することで契約を解除する事ができると言うことです。

その際は、手付金以外の金銭的損失を負う必要はありません。

一方売主側から売買契約締結後に契約の解除をする場合は、受領済みの手付金とあわせて同額の金銭の支払い(手付倍返し)が必要になります。

これは、買主保護の観点からこのように規定されています。

ただし、手付解除には予め決めている期日がありますので、その期日内でしか行うことができません。

また、その期日内であっても、相手方が契約の履行に着手した時点で手付解除はできなくなり債務不履行となってしまいますのでご注意ください。

 履行の着手とは
履行の着手とは、買主が代金の一部として内金を支払ったり、売主が物件の引き渡しや登記の準備を始めた場合等のことを言います。要するに、その契約ごとに対して何かしらの動きが発生した時点で契約の履行に着手したと言うことになります。

手付解除で契約が解除された場合の仲介業者に支払った手数料は返してもらえる?

売買契約締結とともに仲介手数料を支払う場合もあります。

しかし、売買契約は締結したものの上記のような手付解除で契約自体がなくなってしまった場合は、支払い済みの仲介手数料は返してもらえるのかと言うことが疑問になると思います。

不動産業者が受け取る仲介手数料は、あくまでも「最終的に有効に契約が成立した場合に受け取れる報酬」と言うことになりますので、返還するべきと言う意見もあります。

しかし、契約自体は問題なく締結され、当事者の事情による契約解除なので報酬がなくなるのはおかしいと言う意見もあります。

しかも、手付解除であればなおさら不動産業者には落ち度は無いので、過去の判例によると仲介業者の報酬請求権は認められています。

ただし、仲介業者が仲介手数料の全額を請求できるかどうかは別になります。

ですから、もしこのような状況になってしまった場合は、こちらから不動産業者に対して返還請求するようにしましょう。

そうしないと、支払った仲介手数料が返ってくることは無いでしょう。

ただし全額返還されない場合もあります。

このような事態を避けるためにも、媒介契約の締結時に手付解除した場合の仲介手数料についてどうするかと言う内容を取り決めして、契約書に盛り込んでおく事をおすすめします。

まとめ

売買契約の締結が完了すると、売主は買主から手付金を受取ることになります。

この手付金は、最終的に売買代金に充当されるのですが、家の売却が何事もなく無事に完了するまでは手を付けずに銀行等に預けておく事をおすすめします。

不動産取引は契約後から引き渡しまで相当な期間が必要になりますので、いつ何が起こって契約が解除になるかは分かりません。

買主側から手付解除されるのであれば問題はありませんが、売主から手付解除しなければならない事態に陥るかもしれませんので、そのような場合に備えて保管しておいた方がいいでしょう。

また、手付金が高額過ぎると万が一何かあった時大変なことになりますので、売買代金にもよりますが10%までに抑えるか、100万円ぐらいに設定しておいた方がいいでしょう。

手付金はあくまでも売買代金に充当される金銭になりますが、引き渡しが無事に完了するまでは預かっていると言うぐらいの気持ちの方がいいでしょう。




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